法と社会―恐怖の中の平和―

2014年05月22日 14:05

5月22日の備忘録。

 8時40分、駅構内の吉野家でハム納豆定食 420円を食べる。

 

 13時15分、大学近くの宝島でL石焼きビビンバ 734円を食べる。

 

 16時20分から17時50分まで、「法と社会」の講義を行う。

  今日は、学生たちと一緒に「映像の世紀 第8集 恐怖の中の平和」を鑑賞し、論評する。

  授業終了後、受講生に伊藤泰『ゲーム理論と法哲学』を読んで、レポートにまとめてくるように指示する。このことからも理解できるように、この講義は授業自体は映画鑑賞なのでそんなに厳しくないが、毎回の宿題はかなりハードなものとなっている。

  そんな中で、6月5日に提出されたレポートがかなりよく書けていたので、3点を掲示することとする。

Dくん

 『ゲーム理論と法哲学』を読んで

 ゲーム理論とは、フォン・ノイマンなど学者によるそれ以前にはなかった考え方である。特に、フォン・ノイマンは、ゲーム理論の枠組みを、「ゲームを支配するルール」「戦略」「主体(プレイヤー)」「情報」と意味づけた。現在では、ゲーム理論は、純粋数学としての解析的研究のみに留まらず、生物学や工学や、経済学、経営学、心理学、社会学、政治学など社会科学への応用も多く見られ、特に経済学において大きな成功をおさめている。

  本書を読んでわかったことは、ゲーム理論の思考枠組や「フォン・ノイマン-モルゲンシュテルン効用」の基本概念がゲーム理論の中にあるということだ。特にこのノイマン-モルゲンシュテルン効用というのは名前の通り2人の学者が考え出したものである。ゲームにおいて、偶然の要素によって相手の行動が予測できない際に、そのリスク&リターンを考えたり意思決定したりすることをフォン・ノイマン-モルゲンシュテルン効用と言う。人間はゲーム理論を考える際に、この効用を基として、様々な場面においてもリスク&リターンを考えた駆け引きを行っていることがわかった。

 ゲーム理論というと法学の話だけの話のようであるが、先程も述べたように、他の事象でも用いることができる。授業でもやったように、冷戦下における核抑止力の話は特にそうだと思った。核を用いることで得るメリット・デメリットをお互いの国(米ソ)が考えた結果、最終的に第三次大戦は起こらなかった。このように、皆々の周りでもゲーム理論が発生している場合が多いのではないかと考えさせられた。

 

Oくん

 ゲーム理論とは、メリット・デメリットを考えて物事を決定する戦略的意思決定に関する理論である。現在では、生物学や工学などの自然科学から経済学や政治学などの社会科学まで幅広く利用されている。今回の『ゲーム理論と法哲学』においては、ゲーム理論を用いて立法などを分析している。

 私がこの本を読んで、わかったことはゲーム理論の基礎的な概念にはフォン・ノイマン=モルゲンシュテルン効用というものが存在しているということである。この効用はゲーム理論の創始者ともいえる数学者フォン・ノイマンと経済学者モルゲンシュテルンによって考え出されたものである。ゲームにおいてむ、偶然の要素が加わり、相手の行動が予測困難な場合が多いため、ゲームのプレイヤーはリスクの大きさや不確実性を配慮して意思決定をしようとする。このように意思決定にリスクなどを考えることをフォン・ノイマン=モルゲンシュテルン効用という。この効用をもとに人々は様々な場面でリスクなどを考えた駆け引きを行っていることがわかった。

 アメリカとソ連の冷戦でも互いにメリットとデメリットを計算しデメリットが大きかったため、核爆弾は使わずに済んだのではないかと考える。各国の統治者にゲーム理論の考えがあったおかげで戦争が起こらなかったとすれば、ゲーム理論は歴史にも関わるすばらしいものであると思う。一方で、リスクというものをもたずゲーム理論が通用しない存在は厄介な存在であると考える。

 

Tさん

 私がこの本の中で最も興味深かったのは「男女の争い」ゲームの構造が法や政治的場面である「政治の環境」の構造に当てはまるという考え方である。「政治の環境」の構造とはある法的問題に際して共同作業が必要と認識されていると同時に両者に利害の対立が見られるという構造である。私は男女の関係にゲーム理論を用いるという発想が全くなかったので驚いた。ここで私が一つ思ったのは男女が一緒に行動できないという事態に陥るのは互いが自分の利益を優先したときのみなのかということである。たとえば愛し合う男女であれば互いに相手によく思われたいと思うのが常であるため、相手の利益を優先するのではないだろうか。その場合、P.48の表のどこにあたるのかということが少し気になった。その後P.65で話が立憲段階と立法段階につながるが、現代の日本の民主主義政治にもつながる箇所がかなりあったため非常に読みやすかった。

 私がこの話の中で関心深かったのは相関戦略である。相関戦略とは互いの合意の上でひとつの選択肢の中から確実に1つを選ぶ純戦略の組の中から選択を行うものだ。現代の政治では多くの場合、多数決によって解決できる部分が多いそうだ。第5講の授業で見た「映像の世紀」では冷戦について詳しく見たが、冷戦の状況はこの「男女の争い」ゲームの構造に当てはまる部分が多くある。たとえば冷戦終盤には互いに戦争を避けなければならないという共同行為の必要性は感じていたものの、米ソの利益が対立してしまい、キューバ危機という核戦争の一歩手前までとどまることができていなかった。私はその当時に相関戦略をアメリカとソ連が取れればこの事態は防げたのではないだろうかと考えた。フルシチョフは当時、アメリカに自国の強さを認めさせることしか考えておらず、あまり打開策を見出だそうとはしていなかったとDVDから読み取れた。この時に少しでも歩み寄り、話し合い妥協するという相関戦略を取っていれば事態はだいぶ異なっただろうと私は思った。

 今回の課題でゲーム理論が男女という身近な関係から冷戦という世界規模の関係まで幅広く適応するかなり汎用性の高いものであることがよくわかった。今後は歴史上の政治的環境などにおいてもゲーム理論が当てはまるか調べてみたい。

                                                                2014年6月19日、加筆