憲法記念日
5月3日の備忘録。
本日は、憲法記念日なので何か京都、あるいは都内で面白い講演はないかと当日になって調べたが、なかなか見付からず、結局、いつもと変わらない週末になってしまった。翌日、林氏の日記を覗いてみると、以下のような講演が明治大学で行われていたことが分かり、がっかりする。以下、林氏の日記の引用。
5月3日(土)
石川先生、まさか本当にやるとは、しかもあそこまでやるとは……。まあ、あれに受けていたのは、多分学問の世界の内輪の人間だけだろうが。
私は石川先生は尊敬しているし、お世話にもなっているし、人間的に好きでもあるけれども、彼を囲む知的サークル(そういうものがあるとして)には極力足を踏み入れないようにしている。北大から東京に戻ってきた一時期、彼のゼミに参加させてもらったことがあったが、学恩に感謝しつつ短期間で止めた。それは、一言で言って、「カリスマ的魅力を持った人間と、それに憧れて集まってきた人たち」という人間集団に時として生まれがちなある種の精神的雰囲気が、私は個人的に苦手だからだ。それに、あまり距離が近すぎると、自分を見失う危険も生じる。影響力の大きい人からは、その影響を正しく受け止めるためにこそ、距離を取らなければいけない。
そこで、私の石川先生に対する態度は、(一緒にお茶を飲みながら話をするのは大好きなのだが)基本的に「尊敬しつつ、距離を置く」、という形になる。そんなあたりが、石川先生からすると、妙に「お澄まし」しているように見えて、ついからかいたくなるのではなかろうか。…というのが私の解釈だが、当たっているかどうかはわからない。今度お会いしたときに、直接聞いておきたい。
というわけで、石川信者が妙な誤解をすると嫌なので、もう今さらこんな古い話はしたくないのだが、若干の補足説明を。あのアエラ対談は、去年の参院選の直前、96条改正論が切迫した争点だった頃、「護憲・改憲」という古い枠組みに捕らわれない新しい世代の憲法論を、という編集部の方針で、まず東浩紀さんと木村草太さんに声がかかり、次いで木村君の提案で私が加わったもの。が、やってみると、東さんは、「旧来の枠組みを壊すためには当然まず改憲してみることが必要だ」、というお考えから攻勢を張る。私の目からすると、かなり筋の悪い改憲論になっている。そこでこちらは、「別に何が何でも改正反対などという不合理なことは考えていないけれども、そういう変更は今より憲法をもっと悪くしますよ」、という論陣を張って受けて立つ。結果、新しい世代の憲法論どころか、旧来の護憲・改憲論が再生産されただけ、という結果になる。石川先生はそこを捉えて、「見るべきところのない対談」と評するわけで、それはその通りなのだが、あのレベルまで持っていくこと自体が本当に大変だったのです(編集部の作った第一稿が、「有名人」東さんの発言ばかり大きく扱うもので、それに逐一手を入れたり注文を付けて、ある程度公平で内容的に見られる水準のものになるまで相当の苦労を強いられた、という裏話もあり)。
その中で、あの「車」の発言をしたのですが。そのココロは、自民党流の改憲案には、憲法の象徴的側面に自分たちの理想や価値観を強く反映させようという面と、96条改正を含め国の統治のメカニズムの側面自体を変えようとする部分がある。前者も大いに問題があるが(車に喩えれば外装をいわば「痛車」にすること)、それだけなら法律家としてはそういう部分は無視して粛々と従来の解釈論的営みを積み重ねていくことが絶対に不可能になるとまでは言えない。が、後者は、まさに車のエンジンに手を入れるようなもので、下手をしたら車が動かなくなる。前者に対する心情レベルでの情熱から後者を軽々しく変えようとする類の議論(96条改正支持者のある部分はそのように見える)は本末転倒甚だしい…という趣旨であった(石川講演はその一部だけを切り取って紹介している)。石川先生は、その車の比喩に引っかけつつ、「痛車」の話から、逆に車の内部のメカニズムという側面を中心にお話をされ(エンジン・ステアリング・コントロールという三題噺)、しかし最後に、車の外部と内部が区別できるといっても、デザインと機能は本来密接に関係しているはずだ、という指摘をされたわけで、その最後の結論あたりが今日の話の肝なのでは、と私は個人的に思う。…とまあ、要するにそういう話です。「石川先生は林をコケにして散々弄りまくっていたぞ」などとツイッターに書き込む人間に災いあれ。
https://www3.plala.or.jp/verfassungslehre/tagebuch.html
そこから、Google検索で調べてみると以下の記事にもヒット。
石川健治教授・憲法記念講演会(全国憲法研究会)
このブログの前回の記事でご紹介した、
5月3日(土・祝)、明治大学アカデミーコモンでの全国憲法研究会主催の憲法記念講演会、
石川健治教授の講演(他に精神科医の香山リカ・立教大学教授の講演も)がありました。
定員1000人以上の会場が、ほぼ満員でした。
私が石川教授の講演を拝聴したのは3回目でしたが、過去2回は早稲田大学比較法研究所のもので、一般向けの講演は石川教授ご自身初めてとのことでした。
講演で得た知識(②③⑤⑥)、そのほか心に留まったことを簡単に箇条書きすると、
①冒頭、石川教授がプロジェクターに「あまちゃん」こと能年玲奈の写真を映して、「じぇじぇじぇ」と言ったのが、当方には「じぇじぇじぇ」だった。
②美濃部達吉はボラに似ている。
③石川教授は「無事故・無違反・無運転」によるゴールド免許所有者である。
④石川教授が「コスモス」『岩波講座「帝国」日本の学知 第1巻』2006、で論じられた清宮四郎と尾高朝雄の関係を示す、京城帝国大学時代の貴重な写真を観ることができた。
⑤上杉慎吉は、岸信介を東京帝国大学法学部の自分の講座の後継者として考えていた。
⑥「メルセデス」という、車の免許を持っていない私でも知っているドイツ車の名前は、ゲオルグ・イェリネック(ドイツの公法学者、『一般国家学』著者)の弟の娘の名前から採られた。
なおその際、石川教授はイェリネックの弟とその娘の関係のアナロジーとして、関根勤・関根麻里親子を出されたが、多数いる有名人父娘の組合せ中で、なぜ関根父娘を選ばれたのか?、という疑問も併せて生じた。
(もしその理由が「関根勤さんは日本大学法学部在学中に体育会自動車部に所属されていた」のを知っていたからだとしたら、石川教授は実はかなりの芸能通で(も)ある)
と、いうことで、私ごときが石川教授の講演の内容の重要箇所の要約をここで掲げるなどということは不可能なので、1年後に刊行予定の『憲法問題26』(三省堂)までお待ちください。
当方のサイト→
「奥平康弘教授・樋口陽一教授 著作目録サイト」
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https://blogs.yahoo.co.jp/okudaira_higuchi/11653581.html
6時5分、なか卯 京都八条口店で目玉焼き牛小鉢朝定食 300円を食べる。
11時20分、松屋 百万遍店で鉄皿うまトマセット 640円を食べる。
12時25分、ビックカメラ JR京都駅店でUSBメモリー 906円を買う。
19時6分、なか卯 京都八条口店で以下のものを食べる。
牛すき丼並 350円
サラダセット 150円