日本国憲法の初講義
1月8日の備忘録。
午前8時50分から午前10時20分まで、「日本国憲法/現代人権論」の講義を行う。
講義の具体的内容は、リアクションペーパーの掲載によって代えることとする。
・今日も先生の話はおもしろかった。正当防衛の意味や倫理のとらえ方はいっぱいあるということがわかった。(教育・Oくん)
・高いレベルの倫理を求められても(押しつけられても)、全ての人がそれを遵守することはないというのは、どこか教育と関連性があるように感じた。教師が生徒に理想を求めすぎては、それは生徒にとっての抑圧になりかねず、また、厳しすぎる校則も同様であるように感じた。特に教員は、その職務の性質上、自ら気付かずにエゴを押しつけてしまいがちであるため、気を付ける必要性があるように思った。(教育・Aくん)
・教育がBildungと言われ、由来がこわれた人間を作り直す、本来の前生に戻すという意味を持っているということは、人間は元々悪である性悪説から教育は成り立っているのだと思った。(教育・Kさん)
・侵略戦争は得るものはない、とおっしゃつていましたが、勝算があれば得るものはあると思います。じゃなかったら、昔から今までずーっと戦争がおこっている、ということはないのではないでしょうか?
宗教戦争は少しちがうかもしれませんが、結局のところ勝者が敗者から搾取しているのであれば、得るところはあると思います。(教育・Hさん)←講義で、16世紀のスペインの収奪式植民地政策は破綻し、19世紀には植民地経営には、かなりのインフラストラクチャーの整備を行うことが自覚されるようになってきたと説明しました。実際、矢内原忠雄や石橋湛山は植民地不要論を説いたのは、植民地経営において資本投下に対して得られるものが少ないという利益衡量も働いていたと思います。
・本日の講義もたいへん愉しかったです。日本の植民地政策にそんなにも莫大な資本がかかっているとは知らず、たいへん驚きました。当時の東北は不作などによって飢えていた印象は強いのですが、そんなにも大きな問題になっていたのですね。東北生まれなのに知らず、少し悔しく、そして調べてみたいと思いました。(教育・Mくん)
・戦争や植民地に対して、先生の考えが独特であり、初めて聞きました。(教育・留学生さん)
・自衛隊に関して授業中に「文言解釈」で見れば違憲で、「立法者意思解釈」に依っても微妙であるという見解がなされていたが、私も同じように感じる。現在、安倍首相が9条の改正を求めているが、先生の言うように何十年も前に作られた憲法でいつまでも国政を進めていくのは確かに良くはないと思う。が、9条のことや、戦力保持などには国民がもっと注意深く見ていなければ、いつかまた戦争というものを日本が起こすような事になり兼ねないと思う。もっと日本は国政に敏感でいる必要があると思う。(教育・Oくん)←わたとしは変遷論は支持しますが、改憲論は反対です。
・自衛隊の議論は水掛け論だと思っていたけど、戦争の種類や自己保存本能を考えることで、合憲側の主張が明瞭化された。国家の防衛に専念する軍隊にするためにも、あえて「侵略戦争を禁ずる」という文言に変えるべきだと私は考える。(教育・Mくん)←仮に改憲論に立つとしたら、私も君の提案に賛成です。
・確かに、日本の国内での外国人の問題でさえ、色々解決できていないのに、他の国にまで介入するのは枠を越えているのではないか、ということにそう言われれば、そうだなと思いました。
ハードルの高い倫理を押しつけても、みんなが守れるはずはなく、みんなが守れる程度のものでなくてはならないということに納得しました。(教育・科目等履修生さん)
・「戦争をしないという消極的な平和」と「平和を作り出すために、積極的に戦争を終わらせる平和」をユダヤ教とキリスト教に例えて説明してくださったのは分かりやすかったです。イメージもついたし、印象に強く残りました。←わたし自身は、本来的なイスラム教のはなしもしたつもりなのですが。
私も先生と同じく、自衛隊の存在は賛成ですし、自衛戦争も当然だと思っています。しかし、先生のように深く論理的に考えてはいなかったので、今日の講義のレジュメは何度も読み、もっと自分の考えを深めたいと思いました。
戦争の話が出てきたところで先生に質問ですが、先生は首相の靖国神社の参拝には賛成ですか?反対ですか?(教育・Mさん)←心情的には、わたしはテオジストなのでなんの問題もないと思いますが、外交政策的には、首相の参拝は下策でしょう。少なくとも、政治はわれわれにメリットを齎すことが求められるのであるから、外交上のデメリットを引き起こした以上、政治的責任の問題はあると思います。ここで注意しておかなくてはならないのは、靖国を信仰している人もまた、憲法20条の信教の自由を享受しているということ。それと、中国および韓国の態度、そしてアメリカの今度の遺憾表明は内政干渉であるということ。その意味では、今後の外交手腕が問われることになろうかと考えます。
・日本は憲法の第9条により戦争を放棄しています。今日の講義では、戦争には侵略戦争と防衛戦争があるということを知りました。先生のレジュメでは、侵略戦争は「当時の身の丈(国力)に合わない軍備拡張と大陸侵略を展開し、やがて「無条件降伏」というある意味で醜態を晒してしまったから」と書いてありましたが、それでは「侵略戦争によって日本は負けて「無条件降伏」という醜態を晒してしまったために、侵略戦争はいかなる理由があっても許されることではない」というふうに読み取れると思います。が、本当にそれが侵略戦争を許さない理由として適当なのでしょうか。(教育・Tさん)←なかなか鋭い質問ですね。私の説明では、戦争に勝っていれば「侵略戦争」も「可」=「正義」ということになるのではないか、というのがあなたの疑問であろうかと思います。直截に言えば、実際には「勝てば官軍」なので、侵略戦争も正義ということになるでしょう。ただし、法哲学的には大問題となるでしょう。いま流行のマイケル・サンデルも、日本に対する原爆投下は誤りではないということを言っているので、どう考えても日本人の立場からすると、原爆投下は手段として正当化されないのですが、勝者の理論から、それは「戦争をはやく終結させた」という結果論によって正当化されているようです。なにか、アメリカのこの議論は功利主義的な理論なので胡散臭いのですが、正義論をここで解説し始めると古代ギリシア哲学までさかのぼらなくなるので、ここでは、あなたの疑問はもっともだと応えておくことで済ませます。
・「平和主義」についての説明でしたが、平和と正義の違いがなんなのか、についてもう少し詳しく解説してほしいです。また、戦争をひとまとめにして悪いものだ、というのではなく、防衛(自衛)戦争に関しては否認することはできないとのことでしたが、私自身の考え方としては、結果として武力を行使することになるので、悪いことではないかな、と思います。“話し合い”という解決の手段もあると思うので、戦争で人間の生命を奪っている現状がある限り、是認はできません。(教育・Hさん)←まず国際法上、現在の戦争観は近代以前の「聖戦論」から「無差別戦争論」に変わっています。それでは、「悪い戦争」も認めるのかということになりますが、しかし、この「善悪」は誰が、どのような基準で決定できるのでしょうか。近代以前は、自分の信仰する宗教に基づいてこの「善悪」、「正邪」が定められていました。そうすると、自分の信仰する宗教以外の宗教を信仰する者は「悪魔」ということになります。したがって、「聖戦論」に基づく戦争は殲滅戦につながり、凄惨なものになりました。これを回避するために、戦争に倫理的に善い悪いはないとする「無差別戦争論(観)」ができたわけです。このつながりで、マックス・ヴェーバーの思想を読み取る必要があります。では、この価値多元主義の世界で対立を「止揚する」ものとして、有効な手段とはなにかということで、あなたの言う“話し合い”が提案されたわけですが、この理論の代表的な提唱者であるユルゲン・ハーバーマスもあまりにも多元化した社会においては“話し合い不可能”なものがあることを容認せざるを得なくなりました。ハッキリ言って、この議論も滅茶苦茶難しい議論で結論は出ていません。岩佐先生にでも、質問してください。
(補足)ハーバーマスの「コミュニケイション的行為」理論の問題点は、彼が寛容について議論するとき、この公共圏に参与しない、あるいは出来ない他者を暗黙に排除してしまっている。すなわち前提として、彼が想定する「理想的発話状態」の下で関与者たりえない者を視野に入れていない。
・平和主義には生命・自由・財産権(国民主権、基本的人権の保障)を護るために規定していることが分かった。
侵略戦争はダメだが防衛戦争=自衛戦争は正当防衛として必要ではないかという考えを受けて、70年前の苦しみからそれを越えた正しい道を考える必要もあると思った。フランス語のことわざに、si tu veux la paix prépare la guerreというのがあることを最近知り、日本とのギャップを感じていた。これも、自分の身を守ることににつながった意味だったのだろうかと思った。アメリカの独立戦争のように、平等権を求めて戦ったりしたからこそ、自分の苦しい状況を変えることができる場合もある。ここで人命を失うことがとても問題だと思うが、苦しくて長く生きるか、幸せを求めて戦うか…とても難しいが戦争にも美学があるような気がする。(教育・Hさん)←補足として、si tu veux la paix prépare la guerre とは「平和を望むなら、戦いに備えよ」
・冬休みの宿題で先生のおっしゃっていた映画「博士の異常な愛情」とウルトラセブン「超兵器R1号」を観てみました。非常に興味深くて、映画や特撮を通して、世界を風刺している作品はおもしろいなと感じました。
他にこのような作品で先生のおすすめの作品があれば、教えて頂ければと思います。(教育・Nさん)←来年度の、わたしの「法と社会生活」を履修してください。
11時51分、庄やで松花弁当 680円を食べる(2卓番)。
15時23分、駅構内のSoup Stock Tokyoで下記写真のEAT-IN SS-セットを食べる。
EAT-IN SS-セット 900円
東京ボルシチ
オマール海老のビスクS
(セット)白胡麻ご飯
15時38分、駅構内ビルにある中国料理惣菜KOUSAIで以下のお弁当を買って帰る。
海老天チリ弁当 670円