日本国憲法/現代人権論レジュメ 第一時限目
2018年度・冬季集中「日本国憲法/現代人権論」 第一日 プログラム 中野雅紀
第一時限目(2/19 10:20-11:50)
ガイダンス
自己紹介/なかの まさのり/伊藤博文と相葉雅紀/音と訓の一致/雅は訓で「まさ」、紀は訓で「のり」/したがって、訓で統一するなら「まさのり」/雅紀を音で統一するならば「がき」/一応、神主の流れを継ぐので「まさのり」が正解/「どきゅんネーム」あるいは「キラキラネーム」以外にも伝統的名前の付け方・読ませ方をしていない人が多い/教養の欠如/「三権分立」をどのように読むのか/「さんけんぶんりつ」なのか「さんけんぶんりゅう」なのか/構内に植わっている木を「立木」という/とすれば、後者の方が正しいのでは/清宮四郎の名著『権力分立制の研究』(有斐閣、1950年)/
東京生まれの大阪育ち/生まれは/東京都中野区上高田/しかし、先祖は愛媛県出身/学部は中央大学法学部法律学科・慶應義塾大学文学部哲学系/大学院は中央大学大学院法学研究科・京都大学大学院法学研究科/専攻は国法学(Staatsrechtslehre)、とりわけドイツ国法学、日本法では憲法/この大学に赴任してからちょうど20年/これまで、中央大学、埼玉大学、千葉大学、芝浦工業大学、武蔵丘短期大学、東京農工大学、慶應義塾大学、常磐大学などで講義を担当/今年で、茨城大学に赴任して21年目に入ります/
授業の進め方/テキスト-参考書/宍戸常寿編『18歳から考える人権 (〈18歳から〉シリーズ)』(法律文化社、2015年)・櫻井智章『判例で読む憲法』(北樹出版、2016年)/以上の二冊は、わたしの「法学概論」、「法と社会」ないし「憲法と社会生活」を履修していればすでに所持しているはず/資格試験・公務員試験を受験・合格したい人は単著で300頁越えの基本書をお勧めする/定評のある基本書としては芦部信喜/高橋和之補訂『憲法 第六版』(岩波書店、2015年)があげられるが、今年の三月に第七版が出版されるのでおすすめしない/わたしのおすすめは佐藤幸治『日本国憲法論 (法学叢書 7)』(成文堂、2011年)と大石眞『憲法講義Ⅰ・Ⅱ 第三版』(有斐閣、2014年)/その他、意外と知られていないが使えるものとしては長尾一紘『はじめて学ぶやさしい憲法―豊富な図解と身近な事例でわかりやすく解説 (公務員試験 16)』(実務教育出版、1997年)および櫻井智章『判例で読む憲法』(北樹出版、2016年)/読み物としては、樋口陽一『憲法 第三版』(創文社、2007年)/いずれにせよ、判例集で補足していかなければならない/最高裁判所ホームページ www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1 /なお、他の社会科科目の教科書はビジュアルに訴える資料集が多いが、法律学は伝統的に文字・言葉によって論述する傾向が強いので、そのような本は少ない/ここでは、初宿正典他編『目で見る憲法【第5版】』(有斐閣、2018年)をあげておく/
成績評価/後期「日本国憲法/現代人権論」は少人数だったのでノート作成・提出で採点した/ただし、この集中講義に関しては人数が少ないが「日本国憲法」の授業はJABEE認定プログラム対象科目なので筆記試験を実施する/Japan Accreditation Board for Engineering Education/国家資格である技術士の第一次試験が免除/結構、わたしの担当科目は重要/持ち込みの可否/六法という名前の付いた書籍のみ/判例付き六法でも、解説付き六法でも可/時たま勘違いしている学生がいるがコメンタールは不可/表面は最低埋める/時たま、これで分量を満たさず、不合格になる学生がいる/試験までに三つの課題を与え、本試験でそのなかから二題出題、さらにその中から一題のみ選択解答/「です・ます」調ではなく、「ある」調に/ペン書き/消しゴムで消す必要はなし/森絵都『みかづき』の吾郎先生/棒線で消してくだされば結構/GPA/ Grade Point Average /米国の大学や高校などで一般的に使われており、留学の際など学力を測る指標となる。日本では、就職の足切り、あるいは大学院進学の際の足切りとされる/リアクション・ぺーパー/追試はなし/追試をする前提ならば、それに応じて試験出題の難易度が上がる/三種の神器/八咫鏡(やたのかがみ)/八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)/ 草那芸之大刀(くさなぎのたち)/「起承転結」/これについては、第二時限目 「起承転結」のしっかりした文章を書こうで再度詳述する/
具体例/裁判の種類/判決と決定/「口頭弁論」と「書面審理」/「認容判決」「却下判決」「棄却判決」/三審制/三審制の問題点/被告人の第一審の敗訴の場合には、控訴できるのは権利/しかし、検察側が敗訴した場合、検察側が上訴(控訴・上告)をするのは問題/一事不再理・二重の危険の禁止/アメリカでは無罪判決に対する検察官上訴は禁止/ゲーム「逆転裁判3」の第2話「盗まれた逆転」で、星威岳哀牙は、倉院のツボ盗難事件の新犯人とされることにより、警備会社社長殺人事件の犯人としては裁判されないことをたくらんだ/その意味では、「逆転裁判」はアメリカ的な裁判進行をモデルにしている/しかし、実際のわが国の裁判は「逆転裁判」と違う/日本の最高裁は、「一審の手続も控訴審の手続もまた、上告審のそれも同じ事件においては、継続せる一つの危険の各部分たるにすぎない」(昭和33年1月23日最高裁判所第一小法廷)として合憲/しかし、これは問題である/高田事件(昭和47年12月20日最高裁大法廷判決)・白鳥事件(昭和50年5月20日最高裁判所第一小法廷判決)/このような上訴は、有罪になって刑に服すよりも、長期の裁判を課すこととなり、「疑わしきは被告人の利益に」の原則に反する/コナン君のいう「真実はいつもひとつ」は、誤りである/すなわち、現実の裁判に求められるのは、「実体的真実」の追及ではなく、「手続的真実」の追及である/反対に、無罪になった被告人が有罪にしてくれというのも、できない/人間は神ではないのだから、ましてや第三者の立場である裁判官や裁判員は、手続を通じて被告人の有罪や無罪を証拠や証言によって「真実」に迫るしかない。反対に、当事者の意を離れて「正義」は実現されなくてはならないとするのは、大問題であることを自覚しなければならない/そもそも、なぜ、検察審査制度があるのか/検察審査会制度は,検察官が被疑者を起訴しなかったことがよかったのかどうかを,20歳以上で選挙権を有する国民の中からくじで選ばれた11人の検察審査員が審査する制度です/https://www.courts.go.jp/kensin/q_a/q1/index.html/
控訴と上告/違憲判決/法令違憲と適用違憲/理論上、国会が立法府である以上、その国会が作った法律そのものが違憲となることは原則ない/違憲審査制革命は原則第二次世界大戦後のできごと/わが国における法令違憲判決/ 尊属殺人重罰規定(昭和48年4月4日大法廷判決)/薬事法距離制限規定(昭和50年4月30日大法廷 判決)/ 衆議院議員定数配分規定(昭和51年4月14日大法廷判決)/衆議院議員定数配分規定(昭和60年7月17日大法廷判決)/ 森林法共有林分割制限規定(昭和62年4月22日大法廷判決)/郵便法免責規定(平成14年9月11日大法廷判決)/在外邦人選挙権制限(平成17年9月14日大法廷判決)/非嫡出子国籍取得制限(平成20年6月4日大法廷判決)/非嫡出子法定相続分規定(平成27年12月16日大法廷判決)/女性の再婚禁止期間(平成27年12月16日大法廷判決)/判例の見方/日本は判例国ではない/着眼点/大法廷判決と小法廷判決/アメリカはMarbury v. Madison, 5 U.S. 137(1803))とかLemon v. Kurtzman, 403 U.S. 602とかかっこいい名前/巨人対阪神/日本ではそうではない/たとえば、正式には尊属殺重罰規定違憲判決の名前は「昭和45(あ)1310 昭和48年4月4日最高裁判所大法廷判決刑集第27巻3号265頁 」/下級裁判所にも違憲立法審査権はあるのか/ある/なぜならば、憲法76条の「司法」Bと81条の「違憲立法審査」Aの関係は、集合でいうところのA⊂B/第76条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される/第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である/ すなわち、違憲立法審査は最高裁判所および下級裁判所の民事・刑事・行政事件を通じて付随的におこなわれる/具体的争訟性/原告適格/不平不満ではダメ/ムートネスの法理/etc/
13時00分から再開
第二時限目(13:00-14:30)
「起承転結」のしっかりした文章を書こう
「起承転結」とは/ばかな先輩の話/章立てをしっかりしよう/「起」とは/「承」とは/「転」とは/「結」とは/ヘーゲルの弁証法/テーゼ/アンチ・テーゼ/ジン・テーゼ/トーマス・クーンのパラダイム・シフト/コペルニクスはなぜ、偉大か/わかりきったことを主張しても、それは用語説明でしかない/具体的判例を見てみよう/平成12年 4月25日最高裁判決(地方参政権)/「命令」「禁止」「容認」/「交通法規」/etc/15時から再開
第三時限目 日本国憲法の三大原理・原則
日本国憲法の三大原理/「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」/「国民主権」とは/外国語の学習の仕方/「直接民主制」と「間接民主制」/サザエさん/「平和主義」/「平和主義」とは/平和主義の説明/その歴史/判例/ゲーム理論/日本国憲法の三大原理に序列はあるのか/マックス・ヴェーバーの「価値相対主義」/「超兵器R1号」と「博士の異常な愛情」/「基本的人権」の尊重の説明は、明日以降に行う/ etc/
13時から再開
第四時限目 明日のプログラムの予定と、質問コーナー
あさっての進行予定/質問コーナー/予習より復習/まず、今日はこれから二時間復習すること/リアクションペーパー作成