日本法哲学会総会第1日目

2014年11月10日 12:51

11月9日の備忘録。

日本法哲学会総会第1日目

2014-11-09 10:08
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11月8日(土曜日)
 中野雅紀です。今日は、京大で開催された日本法哲学会総会に参加してきました。


統一テーマ「立法の法哲学 ― 立法学の再定位」について

大会委員長 山田八千子(中央大学)

1. 近時、我が国では、立法の質・量共に著しい増加現象が見られると同時に、立法過程における専門家の役割の変化など、立法現象の大幅な変容がみられる。前者については、たとえば、刑事法、民事法、行政法等の各領域の重要で抜本的な改正やいわゆる基本法の増加などが挙げられる。後者については、専門家としての法制審議会の役割の低下が典型的である。こうした我が国における立法現象をふまえた上で立法システム全体のあるべき姿を構想する学としての「立法学」の確立が求める動きが加速化している。そこで、本年度の学術大会統一テーマにおいては、法哲学の視点から、立法をめぐる原理的で根元的な検討をおこない、立法学の再定位を試みたい。
従来、立法現象を扱う立法学は、一般に立法過程・立法政策・立法執務等に分類され、政治学、法学、経済学などの交錯する学問領域として位置づけられてきた。日本における立法の規範理論を構築しようという動きについては、古くは末廣厳太郎の実用法学における解釈法学と立法学との区分提示、先駆的業績としての平井宣雄の法政策学、近時の政策法学などが挙げられる。しかし、総体的には、そういう動きは一般化されてこなかったと言えよう。他方、法概念論の領域に目を向けると、1990年代頃から、規範的法実証主義の論者たちから、社会秩序形成における立法の役割への検討へと繋がる重大な問題提起がなされている。さらに、最近の立法に関する規範理論構築の動きとしては、国際的にはレジスプルーデンス(legisprudence)運動が挙げられ、日本国内でも、レジスプルーデンス運動に対応し、あるいは日本政治の現状を受けて、民主社会におけるより良き立法システムの構築に向けての動きが加速化している。
以上のような状況の中で、立法に関する規範的な理論構築という、いわば立法の哲学の領域で、法哲学がなすべきことは多い。しかし、立法をめぐる問題状況は日本法哲学会全体に十分に共有されているとは言えないだろう。そこで、2014年度の大会においては、規範理論としての立法学、立法の法哲学としての立法学の可能性を探究し、法哲学がなすべき問題群を拾い上げて検討することで、法哲学が、立法の哲学としての立法学の構築にとって今後なすべきことの豊かさを提示したい。この際、日本の立法実践に定位するものの、個別立法自体の立法政策としての正当性や立法過程・立法実務の実証的分析には留まらない形での規範理論の在り方を探ることとする。
2. 本シンポジウムにおける各報告・コメントの位置付けを確認しておきたい。前述したように、従来の立法学の領域は立法過程・立法政策・立法執務等に分かれており、本大会では、より原理的なアプローチをするものの、こうした領域区分にも一定の配慮をして報告を配置した。まず、横濱第一報告とこれに対する嶋津コメントは、統一テーマ全体の総論となる報告・コメントである。規範的法実証主義の立場からの整合的で有意な立法優位論を展開しようと試みる横濱報告に対し、嶋津コメントは、立法優位論の基本的立場である、立法を用いて社会を設計するという立論自体への疑問をまさに多種多様な視点から提起する。藤谷第二報告は、公法学の視点から、統治過程における立法の位置を探究する報告であるが、藤谷報告もまた、嶋津コメントとは異なる角度から、横濱報告の立法優位論・議会優位論への批判を含んでいる。藤谷報告への松尾陽コメントは、藤谷報告の問題提起を受けて、法哲学の立場から統治システムや民主政論の再構築を試みる。民法学・開発法学を専門とする松尾弘報告は、開発プロセスにおける立法実践・立法政策を素材とはしているが、正当性と正統性の法動態に着目して、グローバル化の中での良い統治のあり方と立法との関係を検討するものであり、 進行中の債権法改正にも言及する。濱コメントは、松尾弘報告を受けて、法哲学の立場から、立法府・司法府との関係や立法におけるintegrityについて再構成を試みる。この濱コメントおよび松尾陽コメントは、各主報告へのコメントであると同時に、横濱報告の立法優位論を基礎づける規範的法実証主義に向けての各自の法哲学的な立場からの批判も含んでいる。大屋報告は、議会への法案提出前の審議・調整過程までも視野に入れて立法の品質管理の問題を論じ、民主的正統性と立法の品質管理との緊張関係を示した上で、立法過程における内閣法制局などの「専門家」の意義や限界を問う。この大屋報告もまた、横濱報告の立法基盤の民主的正統化の限界を確認し、さらに補完しうる報告である。対する川崎コメントは、立法の品質保証が要請される現状とその実現の困難性を実践的な観点から明らかにする。最後の井上達夫総括コメントは、立法の法哲学構築を目指す本シンポジウムの試みについて、立法の哲学を再定位するという視点からおこなわれる。なお、時間の制約上「立法をめぐる法思想」が統一テーマ報告で扱えなかったため、関連ワークショップとして、「立法をめぐる法思想―19世紀におけるドイツとイギリスを中心にして―」を企画委員であり統一テーマシンポジウムの司会でもある村林聖子会員に企画していただき、緊密な連携をとりあった。また、立法過程に関わるテーマの一つである熟議民主主義についても大野達司会員によるワークショップが開催される。
3. さて、このように各報告・コメントのアプローチの仕方や扱う領域は異なっているが、共通する重要な問題関心がある。一つは、多様な対立している正義構想のうちいずれが正しいかについての「正当性」の問題とは区別される、ある法の「正当性」を認めない人々に対しても法への「忠誠」を要求できるような「正統性」の次元への関心である。もう一つは、我が国の議会民主政における〈法的なもの〉と〈政治的なもの〉との相剋の中での〈法的なもの〉の意義の検討である。これは、「立法ないし立法過程とは統治構造の中でどのように位置付けられるべきか」あるいは「立法における専門的知の役割とは何か」という論点として、各報告の中に現れている。
4. 以上のように各報告・コメントは、いずれも、何らかの形で立法システム全体の在るべき姿を構想するという点を共有しているものの、この在るべき姿には、実は、議会民主政を軸としての集合的な秩序形成によって新たな法を創ることができるという立法モデル(「創る法」)自体を批判するという立場も包含する。制定法すなわちlegislationとしての立法には、民法、刑法のような社会における基本的な法律から、近時ますます増加している基本法にいたるまで、性格も成り立ちも異なる多種多様なものが含まれるが、この立場によれば、法の基本モデルである私法(たとえば債権法のような)の定立領域では、法とは市場を中心に自生的に発生し裁判を通じて確立されるものであり、法は社会の中から成るという立法モデル(「成る法」)こそが「創る法」モデルより優位するべきだと主張される。そして、実は、この立場は、前述した「立法学」の動き自体を否定することにつながる破壊的な契機さえ含んでいると言えよう。本シンポジウムでは、こうした「立法学」自体の意義までを根元的に問い直すような立場も含めて、多様な視点や立場から、立法の法哲学構築へ向けて活発な討論がなされるようにできればと願っている。

11月8日(大会第1日)
[午前の部]
〈個別テーマ報告〉
  《A分科会》内藤淳・赤間聡・堅田研一・髙橋 秀治
  《B分科会》近藤圭介・太田雅子・椎名智彦・宍戸圭介
[午後の部]
〈ワークショップ〉
  《Aワークショップ》
   「立法をめぐる法思想
     ―19世紀におけるドイツとイギリスを中心にして」
        (開催責任者・村林聖子(愛知学泉大学))
   「へーゲルと市民法学・立憲主義・共和主義
     ―「マルクス主義市民法学」でもなく「近代主義市民法学」でもなく」
        (開催責任者・酒匂一郎(九州大学))
  《Bワークショップ》
   「性風俗と法秩序」 
        (開催責任者・陶久利彦(東北学院大学))
   「熟議民主主義と現代日本政治」
        (開催責任者・大野達司(法政大学))
〈総会〉
[懇親会]


12時38分、京都大学生活協同組合Camphoraでシーフードカレー五穀 702円を食べる。






18時20分、京都錦わらい百万遍店で京天豚・焼そばハーフ&ハーフ 842円を食べる。

19時23分、551蓬莱でブタマン 2コ 340円を購入。

 高速バスに乗り込む前に、横山泰行『ポケット版 「のび太」という生きかた』(アスコム、2014年)を読破。

 

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