非嫡出子相続分規定についての最高裁の態度
9月4日の備忘録。
昨日、文教堂書店で買ってきた下記の新書を読了。
本日の重要案件は、下記の最高裁の判断だろう。
通常、わたしは講義において平等権・平等原則を語るとき、わが国の平等原則は原則的に合理的区別は認めるが、不合理な区別は「差別」として認められないということを説明し、この平等原則の違憲審査基準として目的が正当であるか否かを判定する審査(この審査が通らなければ次の審査をするまでもない)と、その目的を実現するための手段が相当なものであるか否かを判定する二段階の審査を通じて判断する合理性の基準が採られていることを判例を素材に紹介する。ただし、本人の努力によっては如何ともしがたい理由に基づく区別は差別は違憲であると付け加える。したがって、今回の最高裁判所の判断は「父母が結婚していないという、子どもにとって選択の余地のないことを理由に不利益を及ぼすことは許されない」ということをもって、民法900条四号但書きを違憲としたことから後者の説明の典型例となるであろう。できれば、わたしの講義を受けた学生は家族でニュースを観ながら、このことを解説していてくれればわたしも教え甲斐があると言えよう。
もちろん、最高裁判所が違憲判断を下したとしても、立法府である国会がこの規定を改正しなければ意味はない。したがって、「違憲判断は決着済みの遺産分割には影響しないと「遡及効」を否定したことはある意味では正当なことである。これを消極的と解釈する立場もあろうが、立法は民主的代表から構成される国会の役割であり、裁判官国家になってはならない。もっとも、尊属殺重罰規定違憲判決のように平成になるまで法改正がなされないということは問題であるけれど。いずれにせよ、家族制度と婚姻制度の抜本的見直しが問題となるだけに保守と革新のイデオロギー対立だけに終わってほしくないと思うのはわたしだけではあるまい。
参照:最高裁判所HP https://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130904154932.pdf
なお、この事件との関連はシスプリ裁判との関係で既に言及したところであるので、過去のこのブログの該当箇所を参照していただければさいわいである(https://verfassung-jp.webnode.jp/news/%E3%82%BC%E3%83%9F1/)。
(追記)
翌日、最高裁判所が来月23日に選挙区の投票価値の不平等の違憲性について争われている事件の当事者双方の意見を聞く弁論を開くことを明らかにした。この点については、竹崎最高裁長官の積極的司法判断の姿勢と評価できるのではなかろうか。
結婚していない男女間に生まれた婚外子(非嫡出子)の相続分を法律婚の子(嫡出子)の半分とする民法の規定を巡る裁判で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)は4日、規定は法の下の平等を定めた憲法に違反し無効だとする決定をした。裁判官14人全員一致の判断で、規定を合憲とした1995年の判例を見直した。
判例変更に伴う混乱を防ぐため、違憲判断は決着済みの遺産分割には影響しないとする異例の言及をした。←ここがポイント
菅義偉官房長官は4日の記者会見で「最高裁の判断は厳粛に受け止める必要がある」と発言。政府は早ければ秋の臨時国会への民法改正案の提出を目指す。
決定が出たのは、2001年7月に死亡した東京都の男性と同年11月に死亡した和歌山県の男性の遺産分割審判の特別抗告審。いずれも法律婚の妻と内縁関係の女性との間にそれぞれ子供をもうけていた。
大法廷は決定理由で、日本社会に法律婚制度が定着していることを認めながらも、家族の形態は多様化していると指摘。「父母が婚姻関係になかったという、子にとって選択の余地がない理由で不利益を及ぼすことは許されないという考えが確立されている」とした。
「規定の合理的根拠は失われている」とし、今回の事案が発生した01年7月には違憲だったと判断。合憲とした二審の判断を破棄して審理を高裁に差し戻した。
最高裁の裁判官15人のうち、寺田逸郎裁判官(裁判官出身)は法務省在職当時の公務との関係を理由に審理から外れた。